6月5日(土)~6日(日)は、千曲市でクラシック・ギター製作をされているさらしなさんからお誘いいただき、「しなの家」での「福田進一 ギター・リサイタル」を聴きに行きました。ご近所のスズムシさんもさらしなさんと一緒の車で来て、参加されました。
「しなの家」(北佐久郡立科町蓼科牧場女神平)は女神湖のすぐ近くで、我が家からは車で20分程です。
しなの家のオーナー(ご主人)が福田進一氏と知り合いで、今回のリサイタルが実現しました。
お客は30人程で、会場となる食堂に車座になって座りましたが、満席です。この位の少人数で、こじんまりした部屋で、日本を代表するクラシック・ギタリストである福田氏の演奏を聴けるのはなんとも贅沢です。
午後6時から、福田氏による曲の説明を交えて、演奏が始まりました。演奏曲目は下記の通りでした。
福田氏のギターは綺麗な音色の上に、豊かで、ふくよかな音です。演奏が盛り上がってくると、大きくはない部屋の空気を震わすように、 豊饒な音が部屋中にあふれ出てきました。
特にタレガ(又はタルレガ)の曲の中で、福田氏のテクニック、音の豊かさが際立って表れているように私は感じました。その中でも、8分30秒の大曲「グラン・ホタ」では、超絶技巧が次から次に繰り出され、豊かで情熱のこもった音があふれ出て、8分余の演奏の間私は引き込まれ、圧倒されました。「グラン・ホタ」は私はデーヴィッド・ラッセル(David Russell)のCDでは何度も聴きましたが、生演奏を聴くのはこれが初めてでした。大袈裟ではなく、こんな凄い演奏は初めて聴きました。
なお、この日使用されたギターは桜井正毅・Maestro-RFで、製作されたばかりのものだそうです。製作者桜井氏も聴きに来る予定だったのですが、予定が変わって来られなくなったとの事でした。
<演奏曲目>
☆フェルナンド・ソル作曲 *3つのメヌエット op.11
第3番ト単調
第5番ニ長調
第6番イ長調
*モーツァルト「魔笛」の主題による変奏曲 op.9
☆フランシスコ・タレガ作曲 *ヴェルディ「椿姫」による幻想曲
*朝の歌(カプリチョ)
*アラビア風奇想曲
*アルハンブラの想い出
*グラン・ホタ
☆イサーク・アルベニス作曲 *アストゥリアス
☆マヌエル・ファリャ作曲 *ドビュッシー賛歌
☆エイトル・ヴィラ=ロボス *前奏曲第一番
*ワルツ・ショーロ
*ショーロス第1番
(アンコール)
☆マヌエル・ポンセ作曲 *エストレリータ
☆レオ・ブローウェル作曲 *特徴的な踊り
演奏のあと、福田氏のCD「Danza Odelisca オデリスクの踊り~タレガ作品集~」を買い、福田氏にサインしてもらいました。家に帰って、CDを聴きましたが、CDはCDで良いのですが、当然ながら生の迫力は伝わってきません。福田氏の演奏は生の方がCDよりも何倍も良かったです。
8時過ぎにリサイタルが終わると、同じ部屋で夕食兼宴会が始まりました。 岩魚、ヤマメなどの山魚と、この辺で採れた山菜を使った料理です。山魚は、渓流釣りが得意のしなの家オーナーがご自分で釣ってきたものです。最後には手打ち蕎麦が出ました。正直言って、私は福田さんのギターが聴きたくて行ったので、料理はあてにしていなかったのですが、どれも予想外に美味しくて満足でした。
ギターが好きな今回のお客さんはお酒も好きな人が多いようで、だんだん場は盛り上がってきました。福田さんは大変気さくな方で、皆と一緒になってお酒を飲んで、お話をされました。
我々3人も福田さん(右側)、しなの家オーナー(左側)と共に記念撮影です(下)。
しなの家特製の「いわな骨酒」を3人で回し飲みです。熱燗に岩魚の香りと味が染み出て、なかなかの味でした。
スズムシさんはさらしなさん製作の10弦ギターを持っていますが、宴会の中で、福田さんはそれを試し弾きしてくれました(下の写真)。
夜が更けるに従って、お客は三々五々、部屋に帰って行きました。お開きになったのは夜中の1時20分でした。その時最後まで飲んでいたのは、福田さん、オーナー、スズムシさん、私の4人でした。4人でいろいろ話し、福田さんからはクラシックギター界にまつわる色々な話が聞けて、興味深かったです。
さらしなさんは弦の付け方について新構造のギター(「完成したギター」をご参照)を製作され(多分世界で初めてのもの)、今回持参されました。福田さんが翌日、日曜日の朝食後それを試奏してくれました。
さらしなさんは屋久杉を使ったギターを作るなど、ギター製作の新しい可能性、基軸にチャレンジされています。
福田さんのお知り合いで、クラシックギターなどの取扱商社を経営されるAさんもその場に入ってきて、一緒に話をしました。Aさんのお話の中で、特に私の印象に残ったのは、「福田さんくらいの人はどのギターを弾いても、福田さん自身の音を出す。アンドレス・セゴビアはどのギターを弾いても、セゴビアの音を出した」と話されたことでした。まさにその通りだと私は思いました。さらしなさん新作のギターは私を含めて何人かが弾いてみましたが、それぞれが違う音を出していました。しかし、福田さんがダントツに良い音、豊かな音を出しました。
ギターは素材であって、その素材から、音色、音量を含めどれだけのものを引き出せるかは弾く人の技術、力量によるものなのだと思います。
あれから4日たった今も、興奮覚めやらぬ感じです。
福田さんの出す音と自分の音を比べてはいけませんが、それにしても違いすぎて、ある意味ショックです。
基礎練習の大切さを、あらためて感じました。
投稿情報: スズムシ | 2010/06/09 09:25
今回のは普通ではなかなか聴けないようなコンサートでしたね。
あんな近くで福田さんの演奏を見て、聴くと、音の出方、響き方、正確さが普通のレベルとは根本的に違うということが私もよく分かりました。
投稿情報: Poran | 2010/06/09 11:54
[いいですね] 素敵な生演奏と、山の幸のごちそう♪いいですね~。・゜゜・(≧∀≦)・゜゜・。Poranさんをはじめ、仲間達も渋くて素敵です♪ジャンルは違いますがコンサートに行きたくなってきました!やっぱり生演奏はいいですよね。
投稿情報: atorakusion | 2010/06/13 14:13
yuminさん、ありがとうございます。
どんな質の良い、高級なオーディオ装置で聴いても、生演奏には勝てないですね。
中身の濃い一泊二日でした。
投稿情報: Poran | 2010/06/13 21:59
トップギタリストを招いての演奏,懇談。いいですねー。プライベート・コンサート。大変ぜいたくなひと時でした。
投稿情報: Enrique | 2010/06/14 18:57
Enriqueさん、ありがとうございます。
福田さんは大変お忙しい方のようなので、こんな身近で演奏を聴くことができ、貴重な機会でした。
投稿情報: Poran | 2010/06/14 20:46