私は遅読で、読書量は少ない方だと思いますが、久し振りにまともな本を読みました。
去年12月27日(日)付日本経済新聞に「エコノミストが選ぶ・経済図書ベスト10」という記事が載っていました。書評欄などでおなじみの経済学者、エコノミストら30人に2009年のお薦めの経済図書をあげてもらい、得点化してランキングにしたものです。1位になったのが猪木武徳著『戦後世界経済史 ~自由と平等の視点から』(中公新書)でした。
それで、私は興味を持って、この本を買いましたが、遅読のため先日ようやく読み終わりました。
本書は第二次世界大戦後から20世紀末までの半世紀余の世界経済の動きと変化を概観しています。また、最終章では2007年以降の今回の世界同時不況についてもふれています。
私は終戦直後の生まれのため、この本に描かれていることは、私が学生時代、そして会社に入ってビジネスの世界にいた間に体験したり、見たり、聞いたりしたことと多くが結びついています。そういう記憶を蘇らせながら読んで行くと、あたかも経済の大河ドラマを見ているような観がありました。
著者の分析、言及は米国、東西ヨーロッパ、アジアのみでなく、中南米、アフリカまでカバーしています。400頁弱の新書本の中で、壮大な経済史を分かり易く記述しています。該博の著者でなければ書けないものと思います。
私自身、日々報じられる経済事象やマーケットの動きに一喜一憂しがちですが、こういう本を読むと、それらは経済全体の大きな流れの中では一部のものに過ぎず、中長期的なスパンの中で、ある程度軸足を定めて観て行かなければならないと、今更ながら感じます。
ところで、こういう本を読んで、今の日本の政治状況を考えると愕然とします。今の政権与党の中で、中長期的視点でグローバルな観点から日本の経済政策を考えている政治家が何人いるのでしょうか? 今の与党は、郵政民営化逆戻り法案やばらまきの子供手当など、経済政策としてはやってはいけないことばかりをやっています。つまり、自分達の選挙対策で(もっと言えば、自分達の選挙ゲームで)で政策を考えているだけです。グローバル化する世界経済の流れの中で、中長期的視点で日本の経済をどうするかというビジョンや発想は国家の運営をあずかる人達には必要不可欠なものです。
それでなくても、長期的人口減少などにより、日本経済は将来むずかしい状況になってくると考えられますが、今のような与党の経済政策がもし今後も続けられるのなら、日本経済の衰退を加速させ、特に私の子供や孫の世代にとっては相当厳しい経済状況になって来るだろうと危惧します。
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