2月10日~12日の記事でも書きましたが、2004年に56歳の若さで亡くなったギタリスト、渡辺範彦氏は1969年「パリ国際ギターコンクール」で日本人として初めて優勝し、天才肌の人と言われ、現在、私の好きなクラシック・ギタリストの一人でもあります。
しかし、彼の演奏で録音され残されているものは少ないです。ところが、先月23日に、パリ国際ギターコンクールでの優勝演奏を含むライヴ録音のCD『渡辺範彦/パリ・ライヴ録音集~コンクール&リサイタル:1969、70&76』が発売されました。私は発売元の山野楽器に注文し、早速ネット通販で購入しました。
このCDにには、1969年の第11回パリ国際ギターコンクール本選の録音(下の1~4)、1970年に国際ギター・フェスティヴァルに招かれた折のライヴ録音(下の12)、1976年の第18回パリ国際ギターコンクールでの客演演奏(下の5~11)が集められています。
『渡辺範彦/パリ・ライヴ録音集 ~ コンクール&リサイタル:1969,70&76』
1 幻想曲 (4:03) ~ ジョン・ダウランド (1563~1626)
2 ソナタ 第3番より 第2楽章 ニ短調 アンダンテ「シャンソン」 (3:52)
~ マヌエル・ポンセ (1882~1948)
3 ソナタ 第3番より 第3楽章 ニ長調 アレグロ・ノン・トロッポ (5:20)
4 マズルカ (5:27) ~ アレクサンドル・タンスマン (1897~1986)
5 パイパー船長のガリアード P.19 (2:22) ~ ジョン・ダウランド (1563~1626)
6 メランコリー・ガリアード P.25 (2:32) ~ 同上
7 ハンソン夫人のパフ P.54 (1:33) ~ 同上
8 組曲「カヴァティーナ」 1.前奏曲 (3:00) ~ アレクサンドル・タンスマン
9 組曲「カヴァティーナ」 2.サラバンド (2:50)
10 組曲「カヴァティーナ」 3.スケルツィーノ (2:29)
11 組曲「カヴァティーナ」 4.舟歌 (2:52)
12 組曲第4番 ホ長調 BWV.1006aより ~ J.S.バッハ (1685~1750)
第1曲 前奏曲 (4:18)
今回のCDはご遺族の強い願いによって実現したものだそうです。CDのジャケットの中で、家族の言葉として次のように述べられています(下の写真)。
「 <CD発売への思い>
・・・(他界して間もなくの) 2004年春、家族は範彦にゆかりのあるフランスの都市を訪ねました。パリでは「第11回パリ国際ギター・コンクール」(1969年)が行われたラジオ・フランス(旧フランス国営放送)を訪ね、コンクール会場であった『メシアン・ホール』を見学しました。そのとき対応してくれた女性職員の素晴らしい機転により、優勝を飾った範彦の演奏録音に出会うこととなりました。この信じられないような巡り合わせに、家族は驚きと感動を覚えました。そしてその演奏を初めて聴いて心に浮かんだ言葉は、純粋、無垢の他にありませんでした。パリの舞台でひと際輝いた22歳の演奏を残しておきたいと思い、家族の中でメモリアルCD発売への夢が膨らみました。 ・・・・・
2010年2月 渡邊悦子、史彦、恵美理 」
第11回パリ国際ギターコンクール本選の録音(上の1~4)はモノラルで音質はイマイチですが、CD化を目的として録音したものではなかっただろうことを考えれば、止むを得ません。しかし、パリ・コンクール史上初の審査員全員一致での圧倒的優勝となったその演奏の内容は十分分かります。1976年第18回パリ国際ギターコンクールでの客演演奏の録音(上の5~11)は音質も良く、渡辺氏の演奏の味がよく楽しめます。
今回のライヴ録音のCDも私は繰り返し聴いていますが、渡辺氏の演奏にはいつも気品があり、かぐわしい香りが漂っています。
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